子宮内避妊具(IUD・IUS)は緊急避妊に使える?日本での今の扱い
子宮の中に小さな器具を入れて妊娠を防ぐ方法を、子宮内避妊具といいます。海外では緊急避妊にも使われますが、日本では扱いが変わってきました。この記事では、日本産科婦人科学会の指針、PMDAの添付文書、WHOの資料をもとに、子宮内避妊具と緊急避妊の関係だけをくわしく整理します。
- 銅を使った器具(銅付加IUD)は、日本では2024年12月で販売が終わりました。
- 代わりに学会の指針に加わったのは、黄体ホルモンを少しずつ出す器具(LNG-IUS)です。ただし、緊急避妊としては適応外(承認された使い道ではない)です。
- 学会の指針では、緊急避妊として使う場合は、避妊に失敗してから120時間以内に入れるとされています。
- 入れるのは産婦人科医です。使うかどうかは、医師の説明を聞いて決めます。
子宮内避妊具にはどんな種類がある?
子宮内避妊具には、大きく2つの種類があります。
| 銅付加IUD | LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム) | |
|---|---|---|
| しくみ | 銅を付けた器具 | 黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を少しずつ出す器具 |
| 日本での今の状況 | 2024年12月で販売中止(学会の指針) | 処方箋医薬品。2007年4月に販売開始 |
| 承認された使い道 | — | 避妊・過多月経・月経困難症(緊急避妊はふくまれない) |
LNG-IUSの添付文書によると、T字の形をした器具に、レボノルゲストレルが52mgふくまれています。装着してから5年を超えないうちに、取り出すか交換することになっています。扱うのは産婦人科医(母体保護法指定医か日本産科婦人科学会の認定医)とされています。
この記事は、器具の製品を比べたり勧めたりするものではありません。
銅付加IUDは今どうなっている?
学会の指針(2025年4月)は、銅付加IUDが2024年12月で販売中止になったため、代わりの選択肢としてLNG-IUSの記載を加えたと説明しています。それまでの指針では、緊急避妊の方法として、飲み薬と銅付加IUDが中心に書かれていました。
WHOの資料は、銅付加IUDを避妊に失敗してから5日以内に入れると、99%を超えて妊娠を防ぐと報告されており、そのまま続けて避妊に使えるとしています。ただし、これは海外の資料の説明です。日本では銅付加IUDの販売が終わっているため、この説明をそのまま当てはめることはできません。
LNG-IUSは緊急避妊に使える?
学会の指針は、LNG-IUSにも緊急避妊の適応はないとしたうえで、今後は使われる場面が増えると見込んでいます。最近の研究から、緊急避妊での効果は十分に期待できると考えられるものの、使うときは十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)のもとで行うことが望ましいとしています。
指針が根拠の一つとして紹介しているのは、アメリカのユタ州で行われた無作為化試験です。避妊に失敗して5日以内に受診した女性を、LNG-IUSの群(355例)と銅付加IUDの群(356例)に分けたところ、1か月後に妊娠していたのはLNG-IUSの群で1例(0.3%)、銅付加IUDの群で0例でした。この結果から、LNG-IUSは銅付加IUDに劣らないと示されました。一方で指針は、それ以前はLNG-IUSだけで緊急避妊をした研究が少なかったことも書いています。
指針は次のような場面でも、LNG-IUSを考えるとしています。
- アフターピルを飲んだあと、吐くことが続くとき
- 肝臓の薬物代謝酵素を強める薬を飲んでいるとき(LNG-IUSは飲み合わせの影響を受けるという根拠がないため)
- 妊娠したことがある女性で、72時間を過ぎていても120時間以内のとき
子宮内システムはどうやって妊娠を防ぐ?
学会の指針によると、LNG-IUSは子宮の中で1日20μg(マイクログラム)のレボノルゲストレルを出し、子宮内膜をうすく変化させます。また、子宮の入り口の粘液の水分が減り、精子が子宮に入りにくい状態になると考えられています。排卵が止まるのは、使う人の約25%とされています。
飲み薬のアフターピルは、主に排卵を止めたり遅らせたりして働くと考えられています。同じ成分でも、働く場所と量が違います。器具から体全体に回るホルモンの量は、飲み薬に比べてかなり少ないと指針は説明しています。
入れる前にはどんな診察がある?
LNG-IUSの添付文書は、入れる前に、骨盤の中の臓器・乳房・おりものの検査をふくむ診察をして、妊娠していないことと性感染症にかかっていないことを確かめるよう求めています。
使えない人(禁忌)として15項目が挙げられています。たとえば、性器の感染症(カンジダ症を除く)がある人、過去3か月以内に性感染症にかかった人(一部の病気を除く)、子宮の形に異常がある人、妊娠している人などです。
学会の指針は、緊急避妊として入れる場合、性感染症のリスクが高い女性には、少なくともクラミジアの検査をすることが望ましいとしています。ただし、結果を待つために入れるのを必要以上に遅らせないことが大切だとも書いています。どうするかは、診察した医師が判断します。
性暴力の被害の後に入れることはある?
WHOは、性暴力の被害のあとは性感染症のリスクが高いことがあるため、緊急避妊のために銅付加IUDを入れるべきではないとしています。性感染症のリスクが高い人では、器具を入れることで骨盤内の炎症のリスクがさらに上がるおそれがあるとも書いています。
被害にあったときは、証拠を残すためにも、早めに産婦人科と警察に相談することが勧められています。相談先と費用の仕組みは性暴力の被害にあったときの相談先、検査については性感染症の検査のページを見てください。
入れた後はどうなる?受診の目安は?
学会の指針によると、緊急避妊として入れたLNG-IUSは、そのままふだんの避妊法として使い続けてもよいとされています。その場合は、最初の生理のあとに、器具が外に出ていないかを確かめるために受診します。そのとき、性感染症の検査も考えるとしています。
使い続けない場合について、指針は、条件を満たせば次の生理のあとに取り出してよいこと、生理が来ない人も妊娠していないと確かめられれば3週間後に取り出せることを書いています。
添付文書は、装着から3か月以内と1年後に受診し、その後も少なくとも1年に1回は受診するよう求めています。次のようなときは、予定を待たずに受診するよう書かれています。
- 出血が多い、または出血のパターンが変わった
- 前の生理から6週間たっても生理が来ない、吐き気など妊娠を疑う様子がある
- 熱をともなう下腹部の痛み、いつもと違うおりものやかゆみがある
入れてから数か月は、生理と生理の間の出血がよくあり、多くは使ううちに治まるとされています。
子宮内システムの副作用は?
学会の指針は、海外の大きなまとめをもとに、骨盤内炎症性疾患(子宮や卵管などの炎症)の発生は年1,000人に1.6人と低いとしています。ただし、入れてから20日間は、感染が6倍に増えると報告されています。
そのほかの短所として、器具の管が太くて入れにくいこと、生理の量が少なくなる・止まること、不正出血、ニキビ、体重の増加、吐き気、頭痛、乳房のはり、卵巣ののう胞などが挙げられています。一方で、出血や貧血が少ないこと、生理痛や生理の量が多い症状が軽くなることは長所とされています。
よく出る疑問
子宮内避妊具を自分で選んで入れてもらえますか?
日本では緊急避妊の適応がないため、使うかどうかは産婦人科医が体の状態を診察し、十分に説明したうえで決めます。希望があれば、受診のときに相談できます。
入れた器具で性感染症は防げますか?
防げません。LNG-IUSの添付文書も、HIVをふくむ性感染症を防止するものではなく、感染を防ぐにはコンドームの使用が有効だと説明するよう求めています。
入れたまま妊娠が分かったら、赤ちゃんに影響はありますか?
学会の指針は、LNG-IUSを入れたまま妊娠を続けても、生まれつきの異常との関連は認められていないとしています。ただし、器具を取り出したり子宮を調べたりすることで流産に至ることがあるので、すぐに医師に相談してください。
120時間を過ぎていたら、子宮内避妊具も使えませんか?
学会の指針は、緊急避妊としてLNG-IUSを使う場合は120時間以内に入れるとしています。それを過ぎた場合の扱いは指針に書かれていないので、すぐに医師に相談してください。時間の数え方は飲む時間のページにあります。
- 緊急避妊法の適正使用に関する指針(令和7年改訂版・2025年4月)|日本産科婦人科学会(2026年10月22日に確認)
- レボノルゲストレル放出子宮内システムの添付文書(2023年6月改訂 第2版)|PMDA(2026年10月22日に確認)
- 経口避妊剤(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール錠)の添付文書の一例(2026年8月改訂 第2版)|PMDA(2026年10月22日に確認)
- Emergency contraception(Fact sheet・2021年11月9日)|WHO(2026年10月22日に確認)
- 令和7年9月18日付 医薬総発0918第2号・医薬薬審発0918第3号(要指導医薬品の緊急避妊薬の販売)|厚生労働省(2026年10月9日に確認)
このページは、添付文書や国・学会の資料など公開された情報をまとめたものです。一人ひとりの状況(飲めるかどうか・妊娠の可能性)は判断できません。飲むかどうか、飲んだ後のことは、医師か薬剤師に相談してください。当サイトは医療機関・薬局の紹介も、薬の販売もしていません。